同じ仏教でも異なる死生観 仏教的死後の世界について
人は死んだらどうなるのか?どこへ行くのか?天国?地獄?浄土系宗派のお坊さんにお聞きすると"浄土へ往生する"と答えが返ってくるでしょう。
では他の宗派は?比べてみると同じ仏教でも故人が行く場所や行程が異なることがわかります。
詳しく書くと書き切れませんので少し端折って比較してみました。
まずは浄土系宗派の死後
阿弥陀如来を信仰する浄土系宗派(浄土宗、浄土真宗他)行き先は極楽浄土ですが、少々その行程に異なる点があります。
浄土宗の死後の世界観
生前、お念仏の教えに生きたものは死後、阿弥陀如来が来迎し六道輪廻を越えてただちに極楽浄土へ生まれることができる。
そこで仏弟子となり何者にも邪魔されずに仏道修行に打ち込む。修行を修め仏と成りこの世に還って人々を救う(還相回向)
極楽浄土では先に亡くなった人たちとで再会を果たす(倶会一処)
葬儀で引導を渡されることによって阿弥陀如来のもとで悟りの道を歩むように導かれる。
ただちに阿弥陀如来が迎えにくるとなると引導の儀式はなくても浄土へは行けそうなので少々疑問は残りますが^^;
浄土真宗(主に本願寺派)の死後の世界観
この世との縁が尽きると同時に極楽浄土に生まれて、阿弥陀如来の本願力によって仏と成り(往生即成仏)迷いの世界(この世)に還って人々を教化する(還相回向)
倶会一処の考え方もあります。浄土宗との違いは阿弥陀如来の来迎を待つまでもなく浄土に往生する点と、浄土での修行という行程を経ずに仏と成るところです。
※浄土真宗の葬儀では引導の儀式はありません。
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禅宗系宗派の死後の世界観
仏陀は人間の死後の世界について問われた時に、あるともないとも答えてはいません(無記)
それを踏襲しているのかこれ!といった明確なものはなく僧侶によっても意見がわかれるようです。
曹洞宗の死後の世界観
葬儀で故人を仏弟子とした上でさとりの世界へ導く『曹洞宗檀信徒必携』には浄土などの明確な場所はなく、決まっていないために僧侶からの回答も様々だそうで「壇信徒に死後、故人はどこへ行くのか?」という問いに対し、仏の子として成仏したと説く、仏国土へ行ったと説く、浄土へ行ったと説くと表現がわかれます。
ただ修正義の第一章「総序」や「正法眼蔵」を読んでいくと中有(死んで次の生に生まれ変わる期間)や来世のような表現を見ることが出来ます。
臨済宗の死後の世界観
曹洞宗と同様に具体的な行き先はなく仏土、悟りの世界、悩みも煩悩から開放された涅槃の世界へ行くとされています。
臨済宗の中興の祖が書かれた白隠禅師座禅和讃を大雑把に訳すと「悟りを得ればここが悟りの世界であり、この自分が仏である」という表現もあります。
密教系宗派
同じ密教系でも真言宗と天台宗では往生する先が大日如来の密厳浄土、阿弥陀如来の極楽浄土と異なります。
即往生ではなく中陰を経る行程があるのが共通点です。
高野山真言宗の死後の世界観
生きているうちに仏となることが可能(即身成仏)と説く。亡くなると弥勒菩薩と空海が来迎する。
故人の魂は空海の導きと、中陰の四十九日間の七日毎に行われる遺族達の追善供養によって功徳を得て密厳浄土へ到達して成仏する。十三仏にも成仏を手助けされる。
葬儀は導師による読経と引導によって故人を密厳浄土へ導くための儀式とされる。
天台宗の死後の世界観
亡くなった後、葬儀で仏弟子となり、引導によって必ず成仏することを言い渡される(この時点では言い渡されただけでまだ成仏はしていない状態)。
阿弥陀如来の来迎によって極楽浄土へ向かう。中陰の四十九日を経て極楽浄土に生まれ、何にも妨げられずに仏に成るための修行を行う。
ここで大切になってくるのが生前に積んだ功徳で、遺族が法要で死者へ追善供養を行い仏と成るのを手助けすることができる。
浄土宗となかり似ている部分がありますが、中陰を経るか経ないかが異なる点となります。
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日蓮系宗派
日蓮宗では生前、唱題信行に励み生きながら仏となることを目指します。(即身成仏)
日蓮宗の死後の世界観
葬儀で故人は読経により安らかな境地に入り、引導によって仏の世界に行くように導かれる。
釈迦如来、多宝如来、四菩薩が来迎し仏として釈迦如来の霊山浄土へ帰る。
浄土=極楽浄土の認識の人も多い?
日本には浄土系宗派の壇信徒が多いということもあり、一般的に死んだらどこへ行くと思いますか?とアンケートすると浄土(他の宗派でも極楽浄土という認識の方が多い?)と回答されると思います。
※お釈迦様が祀られている禅宗の仏壇や神が祀られている神社で「南無阿弥陀仏」と唱える人もいますし(笑)
ちなみに極楽以外の浄土は
霊山浄土 釈迦如来
密厳浄土 大日如来
東方瑠璃光浄土 薬師如来
龍華浄土 弥勒菩薩
ほか
若い人に聞くと「死んだら終わりで何もない」と答える人の割合が多いのではないかと思われますが…
ちょっと細かいことは省きましたがまだ色々調べてみる必要がありそうです。
参考になれば幸いです。
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